忙しい年の瀬に、丸一日布団の中でくたばっておりました。
冷えたり疲れがたまって来るとたまに起きるんですよね〜。
今年の12月は、年の瀬だってのに仕事の手順が一部変更になりまして、その書類の準備等で忙しかったり、フロイデの第九の公演もあり、今年お世話になった友人との忘年会や職場の忘年会、合間を縫ってのオペラ座観劇と、色々と忙しかったでなぁ。
早目に薬を飲んでおけば頭痛は治まるのですが、今回は寝ていれば治るだろうと甘く考えていたのが間違いだった。
そんな訳で少し遅くなってしまいましたが、降りしきる雪の中、行って来ましたクリスマスの名古屋オペラ座ソワレ公演。
劇場に行く前に、地下鉄東山線の新栄駅から、徒歩5分程度の所にある、「カトリック布池教会」へお邪魔してきました。
別にクリスチャンではないのですが、教会の聖堂の雰囲気って好きなんですよ。
こちらの教会は名古屋市都市景観重要建築物に指定されているそうな。
「ステンドグラスの写真を撮りませう!」などとウキウキしながら聖堂に足を踏み入れたのですが、聖堂の中は息をのむほどの静寂が広がっておりました。
中は暗く、お祈りをする人々のシルエットが淡い光の中で静止している。
とてもじゃないですが、間抜け面をさらしながら写真を撮影できるような雰囲気ではありませんでしたね、ええ。
一応カメラを構えてみたりはしたのですが、カメラが自動でピントを合わせようとする「ジー」という僅かな電子音でさえ、無粋に響くほどの静寂でした。
下の写真が最初で最後の一枚です。
今度は誰もいない時に訪ねてみたいなあ。
私にとって写真を撮る事は、場との”対話”という側面があるのですが、しかしながら私個人の対話で、誰かの祈りを邪魔する事はできないのでね。
で、肝心のオペラ座の怪人なのですが、高井さんは相変わらず好調だと思います。
高音は少し重くなってきてるなぁと思いましたが、中音域から低音域にかけての妙な引っかかりや音程のブレがないので、安心して聴いていられる。
個人的に高音の出にくさよりも、低音の引っかかりの方が背筋にゾワッと来るんですよ。
[The Music of The Night]などは、甘く柔らかく歌ってみたり、強く支配的に歌ってみたり、声の糸を強く張ったり緩めたりしながらクリスティーヌを絡め取ろうとしているような、不遜な甘さのある歌唱で良かったと思います。
そう、最近の高井さんのファントムには(と言ってもこの二回ほどの感想ですが)、柔らかい甘さみたいなものを感じるんだよなあ。
ただこの日は沼尾クリスティーヌとの呼吸が今一つで、墓場のシーンで大きくずれてしまったのと、普段よりも高井さんの演技の尺の取り方が短かったのが気になりました。
急いでいるという程でもないのですが、「いつもなら、もっとじっくり間を取って演技してるよなぁ」と思った場面がいくつかありました。
もしこの若干の焦りのようなものが、クリスマス特別カーテンコールが開かれるせいだとするならば、やや苦笑いが浮かんでしまう状況ではありますね。
確かにカーテンコールを楽しみにしている自分がいる一方で、そのために本編が駆け足になるのはどうなんだろうと思う自分もいる。
なかなか難しい所だと思います。
沼尾クリスティーヌ、前回よりは全体的に深い発声で、特に[Think of Me]は柔らかく響いていて良かったのではないかと思います。
ただやっぱり声量を出したい時に、声を平べったく潰して押し歌いをする傾向があって、そのたびに「うぉう!」と思うような、浅くきつい歌声になってしまっていました。
声を潰すことによって声量を出そうとする歌い方、無意識の内に癖になってしまっているのかも知れないなあ。
演技面でも、何と言いますか、あまり共演者の方を向かずに、一人で自分の決めたマニュアルに従って演技しているような印象を受けました。
少し「私の、私による、私の為の演技」になっているかなと。
心理的交流のない演技と言うのは、観ていて説得力に欠ける。
どうしても作りもの感が強くなってしまうのでね。
お久しぶりの鈴木ラウル。
全編を通してとても落ち着いたラウルではあるのですが、その分よくも悪くも印象の薄いラウルになっていたような気が。
ファントムに対してもクリスティーヌに対しても、もう少し強く自分を押し込んでいってもいいのではないかと思います。
それからやっぱりマイクかスピーカーが変わったのかな?
これもこの二回ほどですが、高井さんの声がぶ厚く聴こえる。
好調だからと言われればそうかも知れないのですが、名古屋に入ってから低音域の再現性がイマイチになった事もあり、高井さんの声の厚みを感じる事が少なかったんですよ。
高井さん自身の声が、以前と比べて痩せてしまったせいもあるのかと思っていたのですが、ここしばらくの歌声を聴く限り、そうでもないような気が。
単純に機材の性能の関係で声の響きが抑えられていたのであれば、この一年少し惜しかったですね。
そしてクリスマス特別カーテンコール。
一曲目はアンサンブルさんメインによる、賛美歌111番「神の御子は今宵しも」(Adeste Fideles)のコーラス。
二曲目はバレエメインで、その伴奏に使われていたのが賛美歌114番「天なる神には」(It Came Upon the Midnight Clear)ではないかと思うのですが、どうも記憶が定かでないので、合っているかどうかは甚だ微妙です。
三曲目はカルロッタとピアンジメインの、賛美歌115番「ああベツレヘムよ」(O Little Town of Bethlehem)・・・・だったと思う、多分。
最後に全員による、賛美歌112番「諸人こぞりて」(Joy to the World)のコーラス。
一曲目は舞台に並んでいるのはアンサンブルさんでしたが、コーラス自体は高井さんも参加してたんじゃないかな?
しかし一人一人が正確に音を取る事、何となくハモっているではなく、きっちりとハーモニーを合わせて行く事は、つくづく難しい事なんだなあと思いました。
サービスのカーテンコールに少し厳しいかも知れませんが、これが正直な感想だったりします。
ちなみに、それほど練習にも時間を割けない、手間をかけられない状況で客に楽しんでもらおうとするならば、もう少しカジュアルな曲、もしくはもう少しメジャーな曲を選んだほうがよかったんじゃないかとも思いますね。
静かな祈り路線でいくなら、賛美歌109番「きよしこの夜」(Silent Night)で十分かと。
個人的にはオペラ座だったら、マスカレードの音楽隊を使っての「リトル・ドラマー・ボーイ」(The Little Drummer Boy)なぞいいんじゃないかと思ったり。
カジュアルな中にも、賛美歌的な美しさや静けさがある。
気負わない暖かさの中にひっそりと息づく、静かな祈りが好きなのだ。
前回は昼でしたが、今回は夜のクリスマスツリー&リース。
昼間の撮影では少し色が飛んでしまっていた赤いバラ。
こういう写真が撮れるから一眼レフは素敵だ。
昼は昼できれいですが、やっぱり真の美しさは夜に現れるものなのかも知れません。
昼の光に背を向けて、いざ夜の闇の中に!
ファントムの支配する世界に!