と言うわけで、本日の舞台に対して思った事の主軸はTwitterで書いてしまっているので重ねませんが、ただ本当に出来が悪かったと言うわけではないんですよ。 [The Music of The Night]は、その歌を耳にする人全てを眠りの園へ誘う、魔物の歌のように優しく誘惑的でしたし、天使像の上の嘆きも澄みきった悲しみが滲むような声でよかった。
今日の[The Music of The Night]を聴いていて、思い浮かべた詩がありました。 それがブログの題名にもなっている『Row Row Row Your Boat』。
Row,row,row your boat Gently down the stream; Merrily,merrily,merrily,merrily, Life is but a dream.
[The Music of the Night]の「静かに広がる闇 心も胸もときめく」のメロディ。 曲中で何度か繰り返されますが、今日はこの部分の歌い方がとても素敵でしたねぇ。 穏やかで、丁寧で、静かだった。 父親が娘に歌いかけているようでもあり、魔が闇の世界に人間を誘おうとしているようでもあり、相反する要素をごちゃまぜにして身の内に備え、同時に表現できると言うのは、本当に高井さんの大きな魅力の一つだと思います。 覗き込んでも覗き込んでも、その本当の姿がよく分からないのよな(笑) 変幻自在と言いますか、妖怪変化と言いますか。
[The Point of No Return]は昨日に引き続き、クリスティーヌの手を握りしめての告白が切なくてよかったです。 握った手が上下に小さく震えるんですよ。 ファントムがこの一瞬に、どれだけの気持ちを込めているのか・・・言葉の外に溢れた想いが伝わってきて、何かこう、観てるこちらの感情も喉元まで溢れて来そうになる。 ここでファントムのクリスティーヌに対する気持ちを、きちっと表現する事が出来ると、ラストへかけての流れがとても自然になりますね。 この場面でしっかりファントムの感情を表現する事が出来れば、後は水が上から下へ流れるように、避けられない必然として、ごく自然にあの結末へと運ばれて行く、そんな気がします。
そう言う意味じゃ、[The Point of No Return]のラストでファントムが歌う[All I Ask of You]は、かなり重要な場面なのだと思いますし、ファントムが[All I Ask of You]のメロディを歌う時は、この場面に限らず、結構重要なポイントになってる気がするなあ。 「クリスティーヌ、I Love You」もそうだし、ラストの「わが愛は終わりぬ」の部分も、[All I Ask of You]と[The Music of the Night]の組み合わせですね。
昨日のI Love Youもよかったですが、今日のI Love Youもよかった。 それまで囚われていた何か・・・過去の生い立ちや、醜い顔へのコンプレックスから解放されたような、とても堂々としたI Love Youでした。 昨日も思いましたが、今の高井さんのI Love Youは、真っ直ぐ相手に向かっていくので聴いていて気持ちがいい。 ファントムとして充実しているのかな。 明日が(もう今日ですが)、素晴らしい6000回記念公演になりますよう。 ま、なるんじゃないですかね、今の調子であれば(笑)
そんな訳で結構ヒヤッとする場面も多かったのですが、演技面ではわりと細やかな感情表現をされていたように思います。 [The Point of No Return]も一部声は引っかかったのですが、クリスティーヌの手を取って指輪をはめるシーンで、まるで前のめりに倒れてしまいそうな前傾姿勢で、すがるようにクリスティーヌの手を握り締めていたのが印象に残りました。 ラストのI Love Youも、相手にきちんと向かっていくI Love Youでよかったなぁと。 今日は全体的に、あまり気取らず素直に自分の感情を表現しているファントムで、私の眼には少し新鮮に映りました。 いや、高井さんのファントムって、もっとこう、ひねくれてると言いますか、意地っ張りと言いますか、素直じゃないイメージがあったのでなぁ(笑)
[The Music of The Night]で、クリスティーヌがファントムの仮面をなぞる所などは、いつになく官能的でしたし、その後の鏡の前へのエスコートも、何だか妙に艶っぽかった。 高井さんが「闇を治める私の力に 私の音楽に」というフレーズを、まるでクリスティーヌに語りかけるように歌われていたので、余計にそう感じたのかも知れませんが。 高井さんが持っている色気の質と、土居さんが持っている色気の質が似ているんですかね。
あ〜と〜は〜、昨日に引き続きオケがいいな。 今日は[The Point of No Return]の目立つ所で、ペットが少し引っかけてしまったのが残念でしたが。 [Prima Donna]のラスト、「歌え!」に入る前の「そう、プリマドンナぜひ!」の切り上げのタイミングがぴったりで痺れます(笑) それからヘアドレッサーの人の顔が面白くていいっすね。
特にオーケストラの出来が良かったなぁ。 オケ自体の音もよく揃っていたし、役者さんとのタイミングも合っていた。 高井さんがわりと[Music of The Night]のリズムを、語尾を早めに切り上げて語頭を前に倒す、ポップス的な崩し方をして歌っていたのですが、それにもオケがよく付いて行ってましたね。 疾走感を出すところと、溜めて引っ張るところのメリハリも効いていたし、何と言いますか、一言で言えば「よっしー(※吉住さん)万歳!」な演奏でございました。 そうそう、フルートもいい演奏だったと思います。
とても楽しかったのですが、一方で「本物」はもう二度と観る事ができないのだ・・・・という動かしようのない現実も胸を突きまして、泣き笑いしながら踊るという、傍から見るとかなり不気味な人になってしまいました。 もう「MAN IN THE MIRROR」とか、あの映画のラスト、マイケルが青い光を浴びて両手を広げてストップモーションになる映像が目の前に浮かんでくるんですよ。 これが涙なしに聴けるわけがない。 どうもマイコーの死は、いまだに抜けない棘として心に刺さりっぱなしでして、動かすと痛いんですわ。 やっぱり悔いが残ってるからだろうなぁ・・・完成直前で、永遠に消えてしまったコンサート。 偉大なる才能を、最期まで苦しめ続けてしまったという後悔。
角さんの指揮はわりとテンポがゆっくり目。 個人的には[The Point of No Return]は、もっとアップテンポの方が好みだな。 あのリズムに追い立てられるような切羽詰まった感じが、音楽にせかされているような焦燥感が、「もう戻れない」二人の心情を反映しているようで、ゾクゾクするんですよ。
ただ[The Music of The Night]では、面白いくらいに高井さんの歌とぴったりシンクロしていまして、全体的に歌手の呼吸を汲んで合わせるのが上手い方だなぁという印象を受けました。 もう少し緩急のメリハリが欲しかったのと、もう少し楽器の音がクリアであればよかったかなと。 本当にこれは私の座っていた座席にも問題があったのかも知れませんが、どうも今日の演奏は全体的に音が濁って聴こえたのが残念でして。 でもこうして、オケに対しても感想が書けるのは、全く持って生オケのよさですね(笑) 演奏が日々生きて変化しているというのは、いいもんです。
付けたしその2。 [All I Ask of You]の最後の、「クリスティーヌ、アイラブユー」はとても美しかったと思います。 どこまでも澄んで広がって行くような歌声でした。
]]>オペラ座の怪人2012-03-20T22:40:00+09:00あさってJUGEMあさって
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人は流れて東へ西へ本日の話題。年度末という時節柄か、やたら新幹線が混んでいて、いつになく疲れた事ではなく。隣に座ったおっさんが爆睡した揚句、盛大にこちらに倒れかかって来たので、「無礼なおっさんめ、愚か者め!」と心の中で歌っていた事でもなく。家族には「ちょっとそこまで」と...本日の話題。 年度末という時節柄か、やたら新幹線が混んでいて、いつになく疲れた事ではなく。 隣に座ったおっさんが爆睡した揚句、盛大にこちらに倒れかかって来たので、「無礼なおっさんめ、愚か者め!」と心の中で歌っていた事でもなく。 家族には「ちょっとそこまで」と言って出てきたにも関わらず、家に帰るなり「いや〜、東京はわりと寒かったわ」と口走って東京行きがバレてしまった事でもありません。
そう! チケットが取れたので行って来ました『オペラ座の怪人』マチネ公演。
細かい感想は色々あるのですが、まず高井さんがとにかく疲れている様子なのが気になったな。 出だしの第一声を聴いた時から、声が割れて聴こえるのに「おや?」と思ったのですが、その後の[The Music of The Night]でも、声のざらつきや音程のブレが目立っていましたね。 何とかひっくり返らないようにギリギリでコントロールはしているのですが、細かい音程を支えられずに低めに沈んだり、あるいは高めに浮きあがったりしていた。
と、ごちゃごちゃ書いて来ましたが、全く悪い舞台だったかと言いますと、そうでもないんですよ。 もちろん声の疲労は随所に感じましたが、天使像の上の狂気の眼差しなどはゾッとするものがありましたし、マスカレードの大階段の上に赤い死の扮装で立つファントムの姿は、何をしてなくても「あ、この人やばい」と思わせる禍々しいオーラを発しておりました(笑) 本当に何と言いますか、高井さんの眼は無垢なシリアルキラーという風情があっていいよなあ・・・。(いいのか?) [The Point of No Return]では、もうどこにも行く場所がなくなったファントムの追い詰められた悲痛な心情と、その中でポロっと零れ落ちる光のしずくのような素朴な告白の対比が、鮮やかで胸を締め付けられた。
あ「いや、前から一人カラオケやってみたかったんですよ〜。ジョイサウンドで調べてみたら、『オペラ座の怪人』の曲が、結構マイナーな曲まで入ってるんですよ。これストーリ順に並べたら一人で上演できるんじゃない?と思いまして・・・」 O「あ、渉外課のNさんも『オペラ座の怪人』大好きで、この前神戸市のカラオケ大会出るとかで、[The Phantom of The Opera]のカラオケに付きあわされましたよ」 あ「なななな、なんですと!?で、日本語でしたか英語でしたか?」 O「日本語でした」 あ「でもあの曲デュエットですよね?どうしてたんですか??」 O「一人で裏声使って女声パートも歌ってました・・・・というか3回も聴かされた上に、仮面とマントと帽子のコスプレまでしてましたわ」 あ「!!!!!おっさんやりおるなっ!!!ぜひぜひ女声パートはこのわたくし、あさってにお任せくださいとお伝え下さいまし!!」
こんなに身近で、自分以上に痛い・・・ゴホッ、いえ、熱心なオペラ座ファンに遭遇するとは思っていませんでしたよ。 ヒトカラに挑戦したいのは、オペラ座のみならずマニアックな歌を歌えると言うのもありますが、気兼ねなく声を出して発声練習が出来る場所が欲しいと言うのもありましてですね。 [The Phantom of The Opera]の最高音三点ホを、余裕を持って出せるようになりたいという野望があるんですよ。 今のところ出すだけなら出るのですが、何と言いますか死にかけのロバみたいな声でして。 とりあえず出てはいるので、叩いて鍛えれば何とか安定して来るかな〜と思うんですよね。
分かりやすい場面で言いますと、[Wishing You Were Somehow Here Again]のヴァイオリンの前奏のピッチと、クリスティーヌの歌い出しのピッチは、かなり大きく食い違っています。 ヴァイオリンのピッチが低い。 他にも楽器の響きが暗く傾いている事に「およっ?」と思う場面が多く、バレエのシーンでフルートが派手にやらかしてた事もあり、オーケストラに対する印象はあまりパッとしませんでした。 オケで「おお!」と思ったのは、本編後のカーテンコールでサラ・ブライトマンさんが歌った[The Phantom Of The Opera]の伴奏だけだったような。 そう言う意味では、音に関しては全体的に不安定だったように思いますね。
うーんBDか・・・。 音の問題は改善されているでしょうし、アンドリュー・ロイド=ウェバー氏の姿とか、歴代ファントムが一同に会しての歌だけでも買う価値はあるのかも知れませんが、個人的には本編最後の拍手&ブラボーがな・・・。 見るたびにあそこでがっくり来るのが予想できるだけに、悩みどころなのでありました。
]]>オペラ座の怪人2012-01-18T23:32:00+09:00あさってJUGEMあさって
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JR大阪駅から大和路快速に乗り継いで、44分。行って来ました大和郡山イオンモールへ。何をしに?25周年記念公演『オペラ座の怪人 at the ロイヤル・アルバート・ホール』を観るために、です。本当はミント神戸で上映されている時に観に行く予定だったのですが、期間を勘違いしておりま...大和路快速に乗り継いで、44分。 行って来ました大和郡山イオンモールへ。 何をしに? 25周年記念公演『オペラ座の怪人 at the ロイヤル・アルバート・ホール』を観るために、です。 本当はミント神戸で上映されている時に観に行く予定だったのですが、期間を勘違いしておりまして、チケットを予約しようとした時にはもうクローズされていたんですよ。 一度は”劇場”で観ておきたいよなぁ・・・と言う事で、日曜日に行って来ました。
本編の方は、やはり記念公演という気負いもあってか、全体的に微妙にハイテンションだったような気がします。 タイトル曲[The Phantom of The Opera]の終盤、ファントムの台詞とクリスティーヌの歌の掛け合いなどは、お互い噛みつくような感じでして、まるでスポ根ドラマみたいだなと(笑) 「素振り百回!」 「はいっ、コーチ!!」 「岡、エースを狙え!」 というシチュエーションが勝手に頭の中に浮かんできて、ちょっとニヤついてしまいました。
[The Point of No Return]でマスクとカツラをクリスにはぎ取られて悲鳴を上げるシーンなどは、もうどちらが被害者でどちらが加害者なのか分からなくなりましたよ。 もし自分がクリスティーヌだったとしたら、高井さんのファントムに対しては、迷わずマスクを取ると思うんですね。 なぜなら本当の自分の心をマスクの後ろに閉じ込めて、囚われたまま苦しみ続けるのは気の毒だから。 高井ファントムにとって必要なのは、硬いマスクに覆われている本当の自分を知る事、本当の自分の願いに気付く事。
しかしその後のカーテンコール、アンドリュー・ロイド=ウェバー氏の挨拶や、初代クリスティーヌのサラ・ブライトマンさん、歴代ファントム揃っての[The Phantom of The Opera]や[The Music of The Night]は感動しました。 ロイド=ウェバーさんがスピーチの中で、舞台美術を手掛けたマリア・ビョルンソンさんに触れていたのも嬉しかったな。
が、コーラスの要となる事の多いカルロッタの種子島さんの高音が、上がりきっていない場面が多かったですね。 以前は音色は悪くても、音程は何とか届いていたのですが、この日はC6を超える音域はほとんど上がりきっていなかったのではなかろうか。 しかしその代わりに、無理のない音域での歌声はとても美しく響いておりましてなぁ。 序盤の[Think of Me]などは、本当に一つ一つの音を丁寧に歌われているのが伝わって来るような歌唱でして、久しぶりに「美しい歌を聴いたな」と思いました。 皮肉と言ってしまえば皮肉なのかも知れませんが。 高音が届いていないと言う事は、周囲から言われるまでもなくご本人が一番よく分かっていらっしゃると思いますが、その中にあって美しい歌を歌うという姿勢を失わない点に、歌と共に人生を歩んできた人の強さみたいなものを感じます。 己の調子がどうあっても、やはり歌と言うのは美しいものなのだと。
それと対照的だったのが、同じようにあまり喉の調子の良くなさそうだった高井さんの[The Music of The Night]。 高井さんは基本的に音楽の枠を忠実に守った上で、その純粋な音の中に表現を見出すような歌い方をされる歌手だと思うのですが、この日は珍しく音楽の枠を崩すような歌い方をされておりまして、全体的にちょっと粗い[The Music of The Night]だったように思うんですよ。 勢いだけで流しているような歌だったと言いますか。
このいささか流し気味の[The Music of The Night]を聴いて、「うーむ、本日は駄目か・・・」と思ったのですが、1幕ラストの[All I Ask of You]から、2幕にかけては反対に音に感情のよく載った、地に足のついた演技で良かったのではないかと思います。 [The Point of No Return]も、高音こそ苦しそうでしたが、震える声がファントムの心の震えをダイレクトに伝えていたし、フードを外された瞬間の、それまでの相手を誘惑するような歌唱から、素朴な呟きとも言える歌唱への変化は、単純に物理的なフードを外されただけでなく、心を覆っていたフードをも外されてしまったのだと納得させるリアリティがあった。 ラストの怪人の隠れ家のシーンでも、怪人の自暴自棄がよく伝わって来たしなあ。 それだけに、序盤の[The Music of The Night]の浮き上がりがもったいなかったなと。
苫田クリスティーヌ、相変わらず[Angel of Music]の、ファントムを夢見るようなフワフワした少女っぽさはいいなぁと思いますね。 ただ全体的に低音を抜き気味で歌われているが少し気になりました。 [Think of Me]で顕著だったのですが、高音はガーッと張り上げて、低音は語尾を抜いて歌っている事が多いために、キーン!ショボーン・・・キーン!ショボーン・・・という感じで、歌のバランスが悪くなってしまっているんですね。 ソプラノにとって低音は出しにくいので、どうしても流してしまいがちになるのですが、裏を返せばその歌い難い部分をしっかり歌う事によって、曲の印象をグッといいものにすることが出来る。 歌い難い所というのは、むしろ狙い目なんですね。 低音を意識して丁寧に、しっかり支えて歌えば、もっとこの歌に端正な味わいを加える事ができるのではないかと思います。
それからこれは先ほどの高井さんの[The Music of The Nigth]の感想とも通じるのですが、苫田さんも音楽を自己流に崩すことで、感情表現をしようとしている所が多いなと。 語尾を跳ね上げたり、音を不安定にする事で感情の高ぶりを表現するような歌唱をされていたり、音楽よりも自己表現を優先させているなあと感じる場面が多く見られたように思います。